最低賃金


「全国最賃アクションプラン」ー第28回全労連定期大会

 

全国一律最賃制闘争昔話ーいるかの「なごり雪」大ブレークと
全国一律最低賃金制確立をかかげたゼネストの挫折。

最近テレビを見ていると、昔なつかしい歌声がつぎつぎに紹介されていた。そのなかに「去年よりずっときれいになった」と歌われた、いるかの『なごり雪』の歌が流れてきた。ナレーターが言うには、1975年に大ブレークしたと。
 1975年といえば、忘れもしない、全国一律最低賃金制の確立を掲げたゼネストの挫折であった。
当時、全国一律最低賃金制の署名を漁村まで出かけていって、お願いしたり、夏季一時金のストライキを実行したときなどは街に署名に全員で出かけたりした。(全国金属八幡地域支部時代)
 挫折したとはいえ、全国一律最低賃金制確立で総評,同盟、中立、新産別など労働4団体共闘の、ゼネストが計画された。私にとって若い日の懐かしい思い出です。 
                  JMIU九州協議会議長・福岡地方本部委員長 雪竹一徳

JMIU(全日本金属情報機器労働組合)が
「全国一律最低賃金制でだれでも、どこでも
時給1000円以上を実現しよう」と春闘ビラで宣伝

1、偽装請負解消と直接雇用(長期雇用・正社員化)の義務化。
2、登録派遣、日雇い・スポット派遣の規制。
3、製造現場の除外など派遣対象業務の規制強化。などです。
 青年に安定した雇用と自立できる賃金を、求めています。

┃◆最低賃金大幅引き上げへ 共産党が修正案(07年11月22日)
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 日本共産党の小池晃参院議員は07年11月22日の厚生労働委員会理事会で、審議されている最低賃金法改正案の修正案を各党理事に提案しました。
 現在の最低賃金は、年収200万円にもならない低水準のうえ、47都道府県ばらばらで大きな地域格差があります。最賃法改正案(衆院で自民、民主、公明が共同修正)は、生活保護水準を下回らないことを盛り込んだだけで、大幅引き上げや格差解消には不十分な内容です。
 日本共産党の修正案は、最低賃金が憲法25条の生存権保障であることを明確にするため、目的に「健康で文化的な最低限度の生活を確保するために必要な賃金の最低額を保障する」ためにあることを明記しています。
 各県ばらばらになっている現状を改めるため、すべての労働者に適用され、全国一律の最低限基準となる「全国最低賃金」を創設。そのうえで、それを上回る地域最低賃金と産業別最低賃金を設定できるとしています。


     2007年10月23日(火)「しんぶん赤旗」
    最低賃金制改善のための日本共産党の要求
    二〇〇七年十月二十二日 日本共産党国会議員団

日本共産党の市田忠義書記局長が二十二日の記者会見で発表した「最低賃金制改善のための日本共産党の要求」の全文を紹介します。

 貧困と格差の拡大が日本社会をおおう深刻な問題になっています。生活保護水準にも達しない「ワーキング・プア」と呼ばれる世帯数が四百万とも五百万ともいわれています。年収二百万円以下の労働者が千二十三万人(22・8%)にのぼり、若者の多数がこうした低賃金に苦しんでいます。なぜ、働いてもはたらいても貧困から抜け出せないのか。その根底には、「先進国」で最低の最低賃金があります。働いている人の最低賃金が生活保護基準を下回るという低額です。
 「人間らしく生き、働きたい」――この切実な要求が、弱者切り捨ての「構造改革」をすすめてきた自公政治に「ノー」の審判をくだしました。こうした国民の世論におされて、政府も最低賃金の引き上げをいわざるをえなくなり、最低賃金法改正案を国会に提出しています。
 ところが、政府・与党案は、最低賃金を都道府県別にバラバラに決定する地域別最低賃金制を固定化するなど、労働者・労働組合の切実な要求から大きくかけ離れたものになっています。
 日本共産党は、貧困と格差の解消に果たす最低賃金制の役割を重視し、世界であたり前になっている全国一律最低賃金制を実現するとともに、最低賃金の抜本的引き上げを求め、草の根からの運動と国会内で全力をつくすものです。

 【日本共産党の基本的考え方】

 最低賃金制は、労働者全体の賃金水準を引き上げるものでなければならず、したがって、全国一律最 低賃金制の確立を基本とする。最低賃金額として、当面、時給千円以上を目標に、抜本的に引き上げる。

(最低賃金の種類)
 (1)最低賃金は、全国一律最低賃金を基本とし、地域的最低賃金、産業別最低賃金を設定する。

 (2)地域的最低賃金は、全国一律最低賃金を下回ってはならない。

 (3)労働者が二つ以上の最低賃金の対象となる場合は、そのうち高い額の最低賃金を適用する。

(最低賃金額の表示)
  最低賃金額は、月、日または時間によって定めるものとする。

(最低賃金の決定基準)
  最低賃金は、労働者とその家族が健康で文化的な最低限度の生活を営むための必要な生計費を満た  すものでなければならない。

(最低賃金の適用範囲)
  最低賃金は、公務と民間を問わず、すべての労働者に適用する。

(最低賃金の減額措置)
  原則として、減額を認めない。

(中小企業への助成策)
  中小企業における最低賃金制の円滑な実施のために、大企業による下請け単価の買いたたきを規制するとともに、最低賃金を保障できる下請け単価を実現する。また、規制緩和政策の見直しをおこない、中小企業への優遇税制や特別融資、賃金助成などの助成策を抜本的に強化する。さらに、国や自治体が発注する事業について、それを請け負う企業が労働条件を確保することを義務づける公契約法・条例を制定する。

(最低賃金審議会委員の公正任命)
 中央ならびに地方の最低賃金審議会は、広範な労働者の声を反映する構成とし、ナショナル センターである全労連等の代表を排除する不公正任命を抜本的に改める。



しんぶん赤旗(07,3,16)

いまこそ人間らしく働けるルールを「日本共産党が緊急提案」

 緊急要求の柱
  1、異常な長時間労働を是正する
  2、使い捨ての働かせ方をなくすー非正規で働く人たちの権利を守り、均等待遇と正社員化
    をすすめる
  3、最低賃金を引き上げ、全国一律最低賃金制を確立する


しんぶん赤旗(06・11・24) 07春闘へ賃金闘争の課題
 日本の賃金が年々低下する根底にはから、正規雇用から不安定雇用へ労働者を置き換える財界・大企業の雇用戦略があります。
不安定雇用労働者は、この10年間で1,65倍、1633万人に上っています。労働者の32,6%、3人に1人が不安定労働者です。
 働いても生活保護かそれ以下の生活しかできないワーキングプアが社会問題化しています。
不安定雇用労働者は1990年代前半までと違って雇用の入り口、青年労働者の中で比重を高めているのが特徴です。20代前半の青年労働者の5人に2人が、フリーターと呼ばれる不安定雇用労働者です。

 ”団塊”の退職
 青年の不安定雇用労働者は30代になっても減少せずに増加し、中高年フリーターの人口は、2001年の46万人から2021年に
は147万人に3倍化するとの予測もあります。
 さらに、雇用の出口でも不安定雇用労働者は増加しています。いまでも60歳代に占める不安定雇用労働者の割合は6~7割です。”団塊の世代”の大量退職がこれに拍車をかけることになります。雇用の入り口から出口まで構造的な不安定雇用労働者群が大量に形成されることになるのです。
 重大なのは、不安定雇用労働者の8割近くの1300万人が年収155万円以下の低賃金労働者であることです。社会問題化している貧困、格差社会の広がりの根底に低賃金労働者層の増大があるのです。

 格差社会正す
 財界・大企業は、膨大な低賃金労働者層を政策的につくりあげることで、日本の労働者全体の賃金を抑制しています。
 労働組合が低賃金労働者の賃金を大幅に引き上げていく先頭に立つことは、賃金闘争の前進とともに、日本の貧困の広がりと格差社会を是正していくために不可欠となっています。
 低賃金労働者の賃金を「生活できる賃金」にしていくために、全国一律最低賃金制最低賃金制の確立が必要です。それはヨーロッパでは常識になっています。
 現行の地域最賃制改善を図る取り組みとあわせて、本格的な全国一律最低賃金制確立を求める全労連などの運動は重要です。

JMIU(全日本金属情報機器労働組合)八幡地域支部
    (05年メーデープラカードスローガンから)
     「パート・派遣何故増える]
     「低賃金・無権利まかりとうるから」          
     「いまこそ、全国一律最低賃金制の確立を」

 JMIU(全日本金属情報機器労働組合)の最賃要求
(07春闘パンフから)

 政府・自治体に対する要求の6項目の
(1)偽装請負解消と雇用の拡大、最低賃金制度改善と
    均等待遇の実現で、格差と貧困をなくせ

最低賃金制度の抜本的改善を求めて
全国労働組合総連合
  全労連は全国一律最低賃金制の確立を「行動綱領」に掲げて結成され、一貫してその実現を追求してきました。同時に、その展望を切り開くためにも、現行の地域別最賃の改善とあわせて、その限界と問題点をも明らかにする取り組みを重視してきました。ワーキングプアが増加する今日の情勢は、最低賃金制度の抜本的改革・強化が待ったなしの重要課題であることを示しています。



1)

政府は日本経済について、景気回復が進み「いざなぎ景気」を超える戦後最長の拡大を続けているとしています。しかし、その実態は、財界・大企業の徹底したリストラ・コスト削減と、これを支援するための「規制緩和・構造改革」による勤労国民犠牲の「リストラ景気」です。その結果、先進資本主義国の中でも極めて深刻な「貧困と格差」が国民のなかに急速に拡大し、大きな社会問題となっています。このままでは労働者の生活のみならず、企業活動も含む国民経済全体に深刻な影響を及ぼすことになります。事態を打開するためには、最低賃金制度の抜本的な改善による労働者の賃金底上げと、賃金水準の引き上げが不可欠・不可避です。



2)

他方で、政府・財界サイドから、私たちとは違った視点での最低賃金制度見直しが主張されています。1959年に制定された現行最賃法は、76年の「法改正」をもって、現在の都道府県ごとの「地域別最賃」と「目安制度」が設けられるようになりました。しかし、財界は現行法に引き継がれた「産業別最低賃金」を一貫して敵視し、その廃止を主張してきました。また、企業の「支払い能力」などを口実に、労働者からの「地域別最賃」の引き上げ要求に対しても、一貫してこれを否定する態度をとりつづけています。



3)

財界の主張を受けて政府の「規制改革・民間開放推進3カ年計画」が制度見直しを打ち出したこと、さらには非正規労働者増大などの「環境変化」もあるなどとして、厚生労働省は最低賃金法の改正を検討、審議してきました。こうして07年3月13日、政府は国会に「最低賃金法の一部を改正する法律案」を上程しました。産業別最低賃金については民亊効のみとされ、労働協約拡張方式は廃止とされるなど改悪面もありますが、他方で最低賃金が「あまねく全国各地域について」決定されるべきとされ、私たちがかねてから主張してきた「生活保護より低い最低賃金」問題の解消、軽すぎる罰則の強化など改善の方向も打ち出されています。
 第166通常国会では、「貧困と格差」拡大の問題が論点としてクローズアップされ、野党各党から「最低賃金を1000円に」「全国(一律)最賃制を」「先進国の中で日本の最賃は取り残された」との声がだされるようになっています。これに対する政府・厚生労働省の国会答弁は、現行の最低賃金は低すぎるという認識は示されているものの、生活できないほど低く設定されてしまった現行の地域別最低賃金額について、これを具体的に改善するのはあくまでも地方の最低賃金審議会だとして、法の趣旨にもとる現状を是正するための措置を積極的にとろうとはしていないのが、今の状況です。
 情勢は、いまこそ、ナショナルミニマム確立と最低賃金制度の抜本的な改善をおこなうことがきわめて重要になっており、しかもこれまでの枠組みを超えた制度のあり方を含めた政策論議・政策展開を実現するチャンスでもあることを明らかにしています。



深刻さ増す「貧困と格差」の拡大

 「ワーキングプア」といわれる、働いても貧困から抜け出せない労働者が増え、貧困と格差の拡大が社会問題となっています。背景には財界・大企業による徹底したリストラ、コスト削減、人員削減と非正規労働者への置き換え、賃金引下げがあり、それにあわせて、労働諸法制の改悪でこれを支援し、社会保障制度の連続的改悪と増税などで勤労国民に「痛み」を強いる自公政権の「構造改革」路線があります。


1)

大企業が史上最高益を更新する一方で、平均所得の傾向的な低下と貧困の拡大が急速に進行しています。国税庁の「税務統計から見た民間給与の実態調査」によれば、2000年と2005年の5年間に民間労働者の平均年収は24.2万円も引き下げられ、労働者総数が横ばいなのに企業の支払った給与総額は約10兆9千億円も減らされています。しかも重要なことは、賃下げ攻撃や正規から非正規への置き換えなどで年収300万円以下の労働者が1692万人と約200万人も増大し、民間労働者の37.6%にも達しています。そして、働いているのに生活保護水準以下の生活を余儀なくされている「ワーキングプア」は、全国で800万世帯(*注)に達しているといわれています。その一方で、「法人企業統計」によれば企業の当期純利益は史上最高益を更新し、この間に2.75倍も膨らんでいます。



2)

05年の政府統計によれば「フリーター」201万人、「ニート(若年無就業者)」64万人、失業者313万人、生活保護受給者147万人、平均年金月額5万円程度の国民年金受給者2300万人等、低所得の勤労国民の総数は約3000万人に達しています。上記の低賃金労働者を加えると、わが国の勤労国民のうち4600万人以上が、年収300万円以下の生活を余儀なくされていることになります。しかも、「構造改革」による社会保障の連続的改悪と定率減税廃止などの増税で国民には13兆円を超える負担増が押し付けられるなど、憲法第25条の形骸化が、実態として進められています。
その一方で、メリルリンチ日本証券の「ワールド・ウェルス・レポート2006年版」によれば、世界の「富裕層」(居住目的不動産を除く純資産100万ドル以上)の16%、6人に一人が日本人で、前年比7万人増の141万人となっています。野村総研の推計によれば「金融資産5億円以上」の「スーパーリッチ」世帯は6万世帯に増えています。
政府がどんなに否定しようと、わが国の勤労国民の中に「貧困と格差」の拡大が進行していることは政府自身の各種統計やさまざまな具体的事実によって明らかにされています。



(注)
ワーキングプアとは、正社員並みにフルタイムで働いても(またはその意思があっても)生活保護水準以下の収入しか得られない就業者のこと。統計としては、総務省の就業構造基本調査が、数字の根拠となる。これに基づく推計でみると、ワーキングプアの世帯数は次の通りとなる(朝日新聞2006年11月04日・週末特集be-b「be word」記事。執筆者は後藤道夫・都留文科大教授(後藤道夫「過労をまぬがれても待っている「貧困」」、『週刊エコノミスト』2006年7月25日号)
   1997年 514万世帯 14.4% 
   2002年 656万世帯 18.7%
   2005年 700万世帯~800万世帯 20.0%前後?(推定)



最低賃金制度の抜本改善を

(1)現行最低賃金制度の問題点

 「貧困と格差」が勤労国民のなかに拡大している背景に、現在の最低賃金制度が労働者の最低生活を保障する「セーフティネット」として機能していないことが大きな要因としてあります。全国各地で取り組まれた「最賃生活体験」(最低賃金水準の所得で一定期間暮らす試み)が明らかにしているように、今の最低賃金の水準は「人間らしい生活」には程遠く、低賃金や地域間の賃金格差を固定化させる役割を果たしているのです。



1)

憲法は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(第25条)こと、そして「すべて国民は、法の下に平等」(第14条)であることを保障し、憲法に根拠をおく労働基準法第1条は、全国どこで働こうとも賃金は「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」であることを規定し、「労使関係の当事者は、その(この法律が定める最低労働基準の)向上を図るように努めなければならない」としています。



2)

ところが、現行の最低賃金法(第3条)は「最低賃金の原則」として「労働者の生計費」と同時に「類似の労働者の賃金」や諸外国にも例のない「支払い能力」を併記しています。
政府や使用者側は後者の二点を盾に、「労働者の生計費」を無視し、「類似の労働者」を「最賃水準の賃金を適用される可能性の高い労働者」層に置き換え、労働者全体との比較をせず、劣悪な労働条件の多い小零細企業の労働者との賃金比較に固執、さらには「法の下の平等」に反して地域間の賃金格差を固定・拡大しています。また、私たちの「生計費」原則に立った改善要求には地場賃金の低さや企業の「支払い能力」などを口実に、これを拒否しています。
現行法の不十分さが、こうした使用者側の不当な主張を裏打ちし、極めて低水準な現行最賃を抜本的に改善するうえでの最大の障害になっているといえます。また、現行法の罰則の軽さも最賃法違反がいまなお全国各地でまかり通っている大きな要因となっています。



(2)私たちの抜本的改善要求の基本

 現行制度の問題点を改善し、最低賃金制度をして、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」や「人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」として、さらには「法の下の平等」を保障するものとして確立するためには、ILOの報告などでも明らかにされている最賃制度をめぐる国際的な到達点も踏まえつつ、以下の点を法・制度に盛り込むことが不可欠です。

1)最低賃金の水準設定の原則について




 最賃水準の設定に当たっては、「生計費原則」を基本に、全国共通の「最低生計費」(可処分所得ベース)を公的に明らかにし、これに「勤労にともなって必要となる経費」と「税・社会保険料負担」分を加味したものを「生活の安定と労働の質の向上」(最賃法第1条)のための必要を充たすべき「最低賃金水準」とする。





 その水準については、最賃が適用されるすべての労働者の賃金動向に照らし、一般労働者の平均賃金の年収ベースで50%を超えるものでなければならない。
※ 最低生計費は生活保護基準の水準とし、「勤労必要経費」はフルタイムで就労している単身者(18歳)の実態生計費などを基に算出する。
※ EUでは05年の「欧州最低賃金会議」において、当面の最低賃金を一般労働者の平均の50%に、将来的には60%に引き上げることを決定している。
※ 現行法にある「事業の支払い能力」は法・制度の立法理念に反するので削除する。



2)最低賃金の額は、月額、日額、時間額として定める。

3)適用対象について

 全国の「すべての労働者」とし、地域、産業、雇用形態、国籍などにかかわりなく、同一額の最低賃金を「全国一律最低賃金制度」として統一的に適用する。

※ 公務員、船員、さらには「契約」相手から「報酬を得ている者」も対象とする。

4)産業別最低賃金

 現行法による「産業別最低賃金」の制度は継続し、「資格職種」など特定の産業内の基幹職種を適用対象とする「職種別最低賃金」を新設する。

5)最低賃金の決定機構などについて




 最低賃金の決定は、国家行政組織法(第3条、第8条)にもとづく最低賃金委員会において出席委員の過半数の賛成によって決定する。委員は、労働者・使用者・公益の三者構成とする。





 労働者委員は労働組合全国中央組織及び全国的労働組合組織から推薦された者の中から、労働団体の潮流・系統の違いに配慮しつつ任命する。公益委員の任命は、労使双方の合意を必要とする。





 最低賃金委員会は、産業別最低賃金(職種別賃金)の申請受理等のため地方にも事務局を設ける。



6)監督と罰則の強化




 最低賃金額を労働者と使用者に徹底するとともに、重層的下請け構造が各産業で広がっているもとで、元請(親)企業も監督行政の対象にできるよう強化する。





 法違反に対する罰金額は労働基準法第24条違反よりも高いものとする。





 監督機関に対する申告及び申告に伴う不利益取扱いの禁止にかかわる規定を創設する。



7)経過措置について

 現行の地域別最低賃金の金額を、前掲「1)最低賃金の水準設定の原則について」で示した全国共通の新「最低賃金水準」へと改正するに際しては、全地域で抜本的な引上げが行なわれることとなる。全国一律制度に改正するにあたっては、次のような措置をとることとする。中小企業の経営状況に配慮し、経済的波及効果を確かめつつ、複数年次をかけてあるべき最低生計費水準にまで引き上げていく。




 現行制度において比較的金額水準の高い地域(現行制度のA、Bランク地域)は、制度施行と同時に、新しい「最低賃金水準」を適用するものとする。





 現行制度において相対的に金額水準の低い地域(現行制度のC、Dランク地域)は、一定の移行期間をとり、できるだけ速やかに金額を引き上げて、新しい「最低賃金水準」を適用するものとする。



(3)最低保障年金制度確立、生活保護改善の運動などと一体的な追求を
 最低賃金制度の抜本的改善と、全国一律最低賃金制度の確立は、これをテコに国民生活のなかに広がる貧困を根絶し、格差を是正する課題でもあります。最低保障年金制度確立、生活保護改善など憲法第25条が謳っている最低限度の「健康で文化的な」国民生活の最低保障と一体的に追求することが重要です。


全国一律最低賃金制度は、全国どこで働いても、誰もが健康で文化的な生活を安定して営み、労働力の質を高めることができるような生活水準を保障するものです。生計費を基礎に、賃金の最低規制をする原則は、ILOの「最低賃金決定制度の適用に関する勧告」(第30号)にも明記されている重要な原則です。また、全国一律とすることの重要性は、第一に、地域別の不当な格差が企業間競争の口実に使われ、労働者の賃金をさらに押し下げているもとで、その是正と賃金水準の底上げにつながること、第二に、下請け単価や工賃の適正化につながり、企業間の「公正競争」確立と中小・零細企業の経営環境の整備に資すること、第三に、制度が一律に決定されることで、年金や生活保護、雇用保険、民事再生など諸制度の公的給付や税制と整合性のとれた制度運用が可能となるほか、農業従事者の所得保障との整合性もとれるようになります。



私たちは、全国一律最低賃金制の要求額として、当面、「最賃時間額1,000円以上、日額7400円以上、月額15万円以上」をかかげています。この水準を最低額とした全国一律最低賃金が確立すれば、国民生活には次のような多くの影響を与えることが可能となります。


第1

に、なによりもパート・臨時などで働く多くの低賃金層の賃上げにつながります。



第2

に、最低賃金の引き上げは、初任給の引上げを促し、社会的に形成される一般労働者の賃金引上げにも波及します。



第3

に、企業間の過当競争を抑制させ、中小零細企業や労働者に対する過当競争のしわよせが緩和されます。(企業は、全国どこで事業をしようと、生活保障ベースの最低賃金を前提に事業計画をたてなければならず、この賃金を下回る単価設定はできなくなり、不当な下請いじめや、行き過ぎた競争入札を抑制できる。つまり、大企業に社会的責任(CSR)を果たさせるための重要な規制となる。)



第4

に、公正競争ルールが確立されることで、労働者の大多数が働く中小企業の経営環境が改善され、そこで働く労働者の賃金・労働条件改善の可能性も拡大されます。



第5

に、公的に明らかにされるべき最低生計費を基軸とした、全国一律の最低賃金が確立することは、全国民の最低生活を保障する各種制度(ナショナル・ミニマム)の確立をはかる第一歩となります。




 労働者と国民、官と民、正規と非正規労働者等々、さまざまな形で国民諸階層が分断され、それをテコに勤労国民のなかに所得や生活水準の「低位平準化」や「貧困と格差」が進行しているもとで、私たちの運動は常に国民的視野で取り組まれることが不可欠となっています。  とりわけ、すでに閣議決定されている「骨太方針2006年」が、「最低賃金」を上回る生活保護制度やその給付水準の引き下げ、年金制度など社会保障制度のさらなる改悪と負担増を国民に押し付けようとしているもとで、これらの諸攻撃をはね返す国民的共同・連帯の運動を労働者・労働組合としてもいっそう重視することが重要になっています。
                                       以上



全国労働組合総連合「最低賃金法改正要求大綱」2007年3月

1.最低賃金制度の目的
 最低賃金法は、労働者が健康で文化的な生活を営み、働くために必要な賃金の最低限の額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって労働者の生活の安定に寄与すると同時に、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資することを目的とする。

2.最低賃金の決定基準
 最低賃金は、労働者が健康で文化的な最低限の生活を営むために必要な生計費を基本に、勤労にともなう経費と税・社会保険料負担分を加えたものとして定めるものとする。
また、その水準は労働者一般の平均賃金の年収ベースで50%を下回ってはならないものとする。
3.最低賃金の額




 最低賃金において定める賃金の額は、月、日、時間によって全国一律に定めるものとする。





 出来高払い制その他の請負制で使用される労働者についての最低賃額の適用については、その者の賃金が時間によって定められているものとみなす。すなわち、出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除した金額とする。



4.最低賃金の種類と競合




 最低賃金は、全国一律最低賃金、産業別最低賃金、職種別最低賃金の三種類とする。





 産業別最低賃金、職種別最低賃金は、全国一律の最低賃金を下回ってはならないものとする。





 労働者が複数の最低賃金の適用を受ける場合は、これらにおいて定める最低賃金額のうち最も高い額の最低賃金を適用するものとする。



5.最低賃金の効力
 使用者は、労働者に対し最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約のその部分については無効とする。無効となった部分は、最低賃金と同様の定めをしたものとみなす。

6.最低賃金法の適用範囲
 最低賃金は、地域、産業、雇用形態、国籍などにかかわりなくすべての労働者に適用する。
公務員、船員、さらには「契約」相手から「報酬を得ている者」も対象とする。
7.最低賃金委員会の設置と構成




 最低賃金の額は、内閣総理(厚生労働)大臣に任命される労働者・使用者・公益委員の三者構成によって設置される最低賃金委員会において決定される。





 委員の構成は、労働者・使用者を代表する委員数は同数とし、公益委員はその半数とする。





 労働者委員は、労働組合全国中央組織及び全国的労働組合組織から推薦された者の中から、労働団体の潮流・系統別に配慮して選出する。公益委員の任命は労使双方の合意を必要とする。





 最低賃金委員会は、産業別最低賃金(職種別最低賃金)の事務をおこなう地方事務局を設置する。





 最低賃金委員会の議事は公開を原則とする。



8.監督行政と罰則




 最低賃金額を労働者と使用者に徹底するとともに、監督行政については元請(親)企業も対象にできるよう強化する。法違反に対する罰金額は労働基準法第24条違反よりも高いものとする。





 監督機関に対する申告及び申告に伴う不利益取扱いの禁止にかかわる規定を創設する。



9.経過措置について
 現行の最低賃金が、新たに定める全国一律の最低賃金額を大幅に下回る地域については、計画的・段階的に引き上げる経過措置を設ける。
 最低賃金制度「関連法案改正」要求について
 今国会で最低賃金制度の抜本改正を実現した後、国民経済・国民生活全体の最低保障を確立する作業を進める。当面、以下にあげる中小企業関連、官公需関連、年金関連の諸法律・制度等の改善を要求する。
(1)「下請中小企業振興法」




 (振興基準)第3条「経済産業大臣は、下請中小企業の振興を図るため下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準(以下「振興基準」という。)を定めなければならない。」
この「振興基準」を改善し、民事効を付与する。
「1.取引対価は、取引数量、納期の長短、納入頻度の多寡、代金の支払方法、品質、材料費、労務費、運送費、在庫保有費等諸経費、市価の動向等の要素を考慮した、合理的な算定方式に基づき、下請中小企業の適正な利益を含み、労働時間短縮等労働条件の改善が可能となるよう、下請事業者及び親事業者が協議して決定すること。」



(2)「下請代金支払遅延等防止法」




 第3条「親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。」
  運用基準の見直し:違反事例の指針の改善
①最低賃金を割り込むような、低額の価格の押し付けは認められないものとすること。
②原材料費や最低賃金などのコスト増に伴う単価上昇を認めないことや、下請の技術開発を勘案せずに単価を引き下げることは違反行為とすること。



(3)「中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改
善の促進に関する法律」




 第3条「厚生労働大臣及び経済産業大臣は、中小企業者が行う労働力の確保を図るための雇用管理の改善に係る措置及び良好な雇用の機会の創出に資する雇用管理の改善に係る措置に関し、基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。」



(4)「会計法」




 第29条の6「・・契約の目的に応じ、予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相手方とするものとする。ただし、・・その者と契約を締結することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあって著しく不適当であると認められるとき・」



(5)「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」




 第15条「国は、各省庁の長等による公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(「適正化指針」)を定めなければならない。



(6)「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」




 第4条「国は、毎年度、国等の契約に関し、国等の当該年度の予算及び事務又は事業の予定等を勘案して、中小企業者の受注の機会の増大を図るための方針を作成するものとする。」



(7)「国民年金法」




 第1条「国民年金制度は、日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」





 第4条「この法律による年金の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、速やかに改定の措置が講ぜられなければならない。」


以上


最低賃金制をめぐる世界各国の動き
今、世界を見わたすと、様々な国で最低賃金制度の改革が進められていることに気づきます。大企業の国境を越えた活動展開が主たる原動力となって進められているグローバル化や規制緩和の流れは、その「負の側面」として、各国に共通した社会問題である「貧困と格差」の広がりを生み出しました。事態を打開する有効な手立てとして、労働者・労働組合や市民団体、学識者や政治家、一部の経営者らは、最低賃金制度に注目し、その制度改革を求めて運動をおこし、政府を動かしています。
 日本はどうでしょうか。グローバル化への対応として、新自由主義の発想にもとづく構造改革路線がとられ、「貧困と格差」問題は年々深刻化しています。働いても豊かになれない、がんばっても報われない「ワーキングプア」が急激に増えています。ネット・カフェを住処とするホームレスのフリーターも増えています。まさに、賃金や雇用の規制の強化は待ったなしで
す。
 ところが、日本の最低賃金制度の抜本的改革の動きは遅々として進まず、最近ようやく法改正の動きが出てきたところです。しかし今なお、財界の代表たちは、最低賃金の改革に反対し続けています。審議会の経営者代表は、最低賃金制度を改革して全国一律制度とし、最低賃金の水準を大きく引き上げると、「企業倒産の連鎖」や「産業の衰退・空洞化」、「国際競争力の低下」が起きると心配しています。しかし、世界各国の経験をみれば、その主張が杞憂であることがわかります。最低賃金の大幅引き上げは、働いても低賃金を強いられ、生活保護に頼らざるをえなかったような人々を、社会保障の被保護者から社会保障の担い手へと“転身”させ、消費を増やし、地域経済を活性化させます。低賃金の改善は、企業に一定のコストを求めますが、そのかわりに労働者の企業定着と熟練度を高め、製品やサービスの質を向上させています。それによって、企業は頻繁な求人や初任者訓練のコストを減らせることもできます。それでいて、各国の実情をみれば、物価の大幅なインフレなどはおきておらず、経済は良好なパフォーマンスを示す傾向にあります。こうした世界の経験に、日本も学ぶべきではないでしょうか。
 国際労働機関(ILO)は2005年に加盟国中100ヵ国を対象に、各国の最低賃金制度についての調査報告をまとめました。格差と貧困の解決という視点からまとめられたILO報告書と、最近の報道などをふまえて、各国の最低賃金制の特徴と水準、最近の最低賃金引き上げをめぐる取り組みの状況を紹介します。
全国労働組合総連合

1.各国の制度面の特徴と動向について

 世界の最低賃金制度は、全国一律制が主流である。ILO調査報告によれば、調査対象国101ヵ国中、59ヵ国(58%)と多数を占めている。特に発達した資本主義国で最低賃金法制を定めている国は、ほとんどが全国一律制度を採用している。
 地域別最低賃金制をとっているのは9ヵ国(9%)だが、その多くが発展途上国か連邦国家で、面積が大きく、各地域の経済的な完結性が高く、かつ、地域間の格差が大きい国である。中国の39、インドネシアの30、カナダの12と比べて、日本のように面積が狭いのに地域別設定が47もあるのは異常である。
 ILO調査報告も、国際的に見た場合の日本の最低賃金制の特異性を指摘している。日本では異様に細かい地域別最低賃金のほかに、地域ごとに細かい産業別最低賃金も設定されている。複数の最低賃金は最低賃金制を変質させるとしている。このため、複数最低賃金を設定してきた国では、貧困根絶と格差是正に向け、最低賃金制の役割を強化するために、最低賃金の数を減らして全国一律の方向に進んできた。フランスでは1970年に全国一律制(SMIC)が導入され、ブラジルは1984年に20州でそれぞれ設定していた地域別最低賃金を廃止して全国一律制を導入した。同様の制度改正は、インドとパキスタンで1996年に、イギリスで1998年に行なわれている。
 ドイツでは、最低賃金を含む労働協約について、労働社会相が一般的拘束宣言を発することにより、当該産業のすべての労働者に適用されることになっているため、建設産業のいくつかの部門を除いて最低賃金制度は設定されてこなかった。しかし近時、東部ドイツを中心に貧困ライン以下の生活を強いられる低賃金労働者が増加するなかで、最低賃金制度導入の論議が活発化している。ドイツ労働総同盟(DGB)と社会民主党(SPD)の最低賃金の要求水準は時給7.5ユーロである。

2.各国の最低賃金額の水準と引き上げの取り組みについて

 最低賃金の水準について、ILO報告の購買力平価の比較で見ると、発達した資本主義国のほとんどが1000ドル以上で、日本の倍近い。日本の最低賃金は月額換算(07年10月)12万円程度であるのに対し、ベルギー、フランス、オランダは20万円、イギリス、アイルランドは23万円、ルクセンブルグは25万円と、日本よりかなり高い。
 この間、発達した資本主義国では、労働組合の組織率の低下、非正規・不安定雇用の低賃金労働者の増加と格差の拡大という問題を、共通して抱えてきた。こうした事態に対して、多くの国は、最低賃金制の役割を強めてきた。1999年から2005年の6年間の最低賃金引き上げ率は、ヨーロッパではベルギー、ギリシャで13%、スペインでは44%の高さとなっている。最低賃金の低いスペインでは、2008年までに月額600ユーロ(約750ドル)へとさらに引き上げることを政府は公約している。イギリスでは毎年の改訂で、07年10月には時給5.52ポンドとなった。全国一律制度が始まった1999年からの8年間で、実に53%も引き上げている。
 ところが、日本の最低賃金は、毎年改定審議に多くの時間と労力をつかいながら、わずか2%しか金額を引き上げておらず、貧困労働者の困窮を放置してきた。
 日本では、何かにつけてグローバル化という言葉がいわれる。しかし、その言葉は、労働者の賃金・労働条件の引き上げの要求を抑えつけたり、中小企業の単価を切り下げるときの方便としてしか使われない。グローバル化をいうならば、労働基準や取引慣行も、グローバルな水準へと引き上げるべきではないだろうか。
 以下、各国の最低賃金改正の動きを、国別にみていくこととしよう。

イギリス
 イギリスでは、労使自治の伝統が根強くあり、「労使関係の未成熟な」業種についてだけ審議会方式の最賃制度を設定していた。しかし、その制度も、80年代にはいって新自由主義のサッチャー政権が登場するや弱体化され、93年にはメージャー政権によって廃止された。セーフティ・ネットを切り下げ、市場主義政策をどんどん進めたために、低賃金労働が増え、所得格差が広がった。こうした事態に対し、労働者・国民からの批判が高まり、労働党政権が誕生。1998年に全国最低賃金法(National Minimum Wage Act)が制定された。この制度は、貿易産業大臣が、公労使の三者からなる「低賃金委員会」に対して最賃改定の諮問を行い、委員会答申を受けて最賃を決定する方式である。99年施行当初は、時間あたり3.60ポンド/時(853円)だったが、2003年には4.50£/時(1,066円)と“千円”ラインを突破した。低賃金委員会は、最賃を引き上げるたびに、地域の経営状況や労働市場などの経済実態を調査・分析し、イギリスの地域経済に最低賃金の底上げがよい影響をもたらしていることを立証、それをもとにさらなる引上げ改定を継続させてきた。
 イラク戦争への対応についての国民的批判におされ、ブレア政権はブラウン政権にかわるが、貧困をなくす方針は堅持されている。低賃金委員会の答申に従って、2007年10月も最低賃金は引き上げられ、一般労働者の最賃は£5.35(1308円)、18~21歳最賃は£4.60(1090円)、16~17歳最賃は£3.40(805円)となっている。

アメリカ
 アメリカには連邦最低賃金と州最低賃金がある。連邦最低賃金はクリントン政権下の1997年に時給4.75ドルから5.15ドルに引き上げられて以来、約10年据え置かれてきた。米労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)は何度も連邦最低賃金の引き上げを求めて運動し、06年には民主党ケネディ議員は、最低賃金を2009年1月1日までに段階的に7.25ドルに引き上げる法案を提出、下院の歳出委員会で法案を可決していたが、共和党主導の上院は06年6月21日これを否決した。AFL-CIOは「現在の議会指導者たちの労働者軽視を明確に示す行為だ」との批判声明を発表し、ケネディ議員は「民主党が上院で過半数を占めれば最初に最低賃金を引き上げる」と宣言した。
 議会の否決をうけ、AFL-CIOは全米19州で最賃引き上げ運動を展開。オハイオ州では最低賃金の6.58ドルへの引き上げとインフレ調整の適用を求め、市民に呼び掛ける運動が進められた。カリフォルニア州では8月22日シュワルツネッガー知事が2007年1月に0.75ドル、08年1月に0.50ドル引き上げて8ドルとすると発表。シカゴ市では市議会が、売上高10億ドル以上の大型小売店に、時給9.25ドルと最低ベネフィット(各種給付金)1.50ドル、最低賃金を2010年までに時給10ドル、給付金を3ドルまで段階的に引き上げる条例を可決した。この条例は大手流通企業のウォルマートなどを対象にしたもので、同社は8月に全米の約3分の1の店鋪で初任給を平均6%引き上げた。
 11月7日の中間選挙では、民主党が上下両院で多数を獲得した。AFL-CIOは「最低賃金の引き上げが共和党の超党派の精神を試すことになる」と述べ、米議会が最低賃金を早期に引き上げるよう求める声明を発表した。新議会で女性初の下院議長に就任するペロシ議員とリード民主党上院院内総務は、最低賃金引き上げが最重要議題の一つだとした。ブッシュ大統領も11月8日の記者会見で、民主党の経済公約の最低賃金引き上げに初めて理解を示した。
 07年1月10日の連邦議会下院で、連邦最賃を7.25ドルに引き上げる法案が、賛成315、反対116で可決され、上院に送付された。下院では共和党からも80人の議員が賛成にまわった。上院では議員構成民主党+無所属が51議席、共和党は49議席と力関係が均衡しており、共和党による議事妨害作戦を破るには賛成60が必要で、共和党議員の一部の支持もとりつけなければならないため、民主党も強行はできず、中小企業への税制優遇措置などがセットで審議されていた。
 最終的に上下両院は、5月24日、連邦最低賃金の引き上げを含む法案を賛成多数で可決し、25日にブッシュ大統領が署名して法案は成立した。その結果、現行5.15ドルの連邦最賃は、2009年7月24日までに3段階に分けて7.25ドルまで引き上げられることになった。引き上げの初回は2007年7月24日で5.85ドル(影響をうけるのは20州。他の30州は既に連邦最賃より高い州別最賃をもっている)とされた。2回目は2008年7月24日で6.55ドルとされる。また、最賃引き上げに伴う経営者の負担を軽減するため、中小企業を対象とする48.4億ドルの減税も実施される。なお、民主党はさらに9.50ドルまで引き上げる法案の検討を開始している。

フランス
 発展のための全職業最低賃金(SMIC)と呼ばれる最低賃金制度をもっている。金額は時間額と月額(週35時間労働)が設定される。毎年7月1日の定時改定に、全国団体交渉委員会(CNNC)の賃金給与小委員会の意見を参考として決定している。この場合、法律により一般賃金の実質上昇率の2分の1を下回ってはならないこととされている。また、SMICが決定された時期の水準に比べて、消費者物価指数が2%以上上昇した場合、翌月の1日から労働省令により指数上昇分だけ改定する「物価スライド制」も設定されている。
 金額水準は 2001年の時間当たり 6.67ユーロ(1,044円)から、2006年1月には8.27ユーロ(1,326円)へ、2007年の1月からは8.44ユーロ(1,354円)へと引き上げられている。月額最低賃金は、2006年の1,254ユーロ(201,174円)から、07年は1,280ユーロ(205299円)とされている。

オーストラリア
 全国一律の連邦最賃制度をもっている。労働組合は最賃引き上げが格差是正に有効であり、かつ雇用や総賃金コスト、インフレに与える影響は少ないとして大幅引き上げを要求してきた。決定機関は豪州労使関係委員会(AIRC)で、2004年には週あたり19豪ドル(1,843円)アップ、05年には週あたり17豪ドル(1,649円)アップを実現し、484.40豪ドル/週(46,977円)とした。法定労働時間の週38時間で換算すると、時間あたりおおよそ1,159円/時の最賃となる。
 2005年には、新たな最低賃金決定機関である公正賃金委員会(AFPC)が設置された。経営者団体が「最賃引き下げのために設立された新機関」と期待をよせたと言われる新組織である。注目された初裁定は11月に下された。その内容は27.36豪ドル/週(2,485円)アップの大幅引き上げとなった。労働組合要求の30豪ドルに近い水準で、511.76豪ドル/週(49,630円、法定週38時間労働で時間あたり1,306円)の最賃が12月から施行された。

ニュージーランド
 ニュージーランドは、1894年に世界で初めて法定最低賃金を確立した国であり、全国一律制度をとっている。金額は2007年4月から時給11.25ニュージーランド・ドル(約960円)に改定された。改定前より1NZドル(約85円)9.8%のアップであり、85年以降で最大の上げ幅となった。組合側は12NZドル(約1,000円)への引き上げを求めて運動し、経営者は引き上げに反対していた。改定によって、労働力人口の約1%、12万人の賃金が引き上げられる。なお、16~17歳については現行の8.20NZドルから9NZドル(765円)になる。政府は2008年末までに18歳以上の最低賃金を12NZドル(1,020円)まで引き上げることを目標としている。

韓国
 韓国労働部は8月1日、2008年1月から同年12月まで適用される最低賃金を時間当たり3,770ウォン(100ウォン=12円43銭として約469円)とすることを決定した。現行の3,480ウォン(433円)より8.3%、円換算で36.4円引き上げることになる。
 韓国の最低賃金は、昨年も12.3%の大幅引き上げがなされていたが、今回の審議において、労働側はさらに1000ウォンの引き上げ(28.7%増)要求を行なった。これに対し、経営側は凍結を主張した。10時間に及ぶ審議の結果、8.3%の引き上げが議決された。
 労働側は、従来から、所得の格差拡大に歯止めをかけるため、最低賃金を従業員5人以上企業の常用労働者の平均賃金(月額約187万ウォン)の50%水準にすべきと要求しており、今回も月額約94万ウォンに相当する時間あたり4480ウォンを要求した。
 一方、経営側は、最低賃金の引き上げが近年高い水準で行われており、中小・零細企業の経営に悪影響を与えるとして、凍結を主張した。
 結果として、引き上げが一桁台の引き上げとなったことについて、経営側の一部には安堵の声もある。2000年以降の韓国の最低賃金の引き上げ率は平均10.6%と、同期間の平均賃金上昇率7.4%を上回っていることから、今回も大幅な引き上げを予想した経営者も少なくなかったためである。
 年々、最低賃金が大幅に引き上げられているため、その影響を受ける労働者の割合(影響率)も年々上昇している。2002年9月の引き上げの影響率は全労働者の6.4%であったが、昨年は11.9%、今回の引き上げの影響率は13.8%に達する。最低賃金が、最低生計費の保障はもとより、大きな課題である所得格差や非正規労働者の労働条件の改善への有効な手段として、積極的な役割を果たすべき、と位置付けられている。
 韓国の最低賃金は、最低賃金法に基づき、労働者の生計費、類似の労働者の賃金、及び労働生産性を考慮して定めるものとされている。適用対象は労働基準法が適用されるすべての事業又は事業場であるが、家族従業者、在宅労働者、精神又は身体の障害により労働能力が著しく低い者、試用期間中の者、職業訓練法による事業内職業訓練のうち養成訓練を受ける者などは適用免除とすることができる。
 韓国の法定最低賃金の決定も、審議会方式で行なわれている。公労使同数9名の委員で構成される最低賃金審議会において審議・決議された最低賃金案は、労働部長官に送られる。労働部長官は、審議会が示した最低賃金案を告示し、労使団体は異議申し立てができる。労働部長官が、その異議申し立てに理由があると認めた場合は、審議会に再審議を要求しなければならない。今回は最低賃金案の告示に異議申し立てはなされず、同最低賃金案どおりに正式決定された。

中国
 中国が最低賃金制度を導入したのは1996年である。全国一律制度ではなく、政府直轄地のほか、省や自治区など地方政府の労務管理局が経済状況に応じて決める。最低賃金水準は、通常の平均賃金の5割程度である(04年全国都市部労働者の平均賃金は1万6024元)。最賃は、主に工場で働く低所得層、特に農村から都市部への出稼ぎ労働者に適用されている。この間、各地で8~64%もの大幅引き上げがなされ、賃金相場全体が上昇している。中国政府は高成長のなかで貧富の格差が拡大していることを憂えており、その是正を最賃に託している。経済政策の上でも、付加価値が低い製品だけを生産しようとする外資の進出を制限する方針を示すなど、「小康(いくらかゆとりある)社会」を目指す流れを強めている。こうしたなか、日系自動車産業の拠点でもある広東省の省都広州市の最低賃金が、2006年9月1日から月額780元(11310円)となった。以前よりも96元(1392円)、14.0%の引き上げである。新水準は中国で最も高い深セン市経済特区内の810元に次ぎ、上海市や江蘇省の690元を上回るものとなる(1元=約14.5円)。

インドネシア
 全国の目安となっているジャカルタ特別州の07年の最低賃金は、月額90万560ルピア(100ルピア=約1円30銭)。前年より9.95%引きあげられ1月1日実施された。これに対し労働組合は不満を表明、国会第9委員会(労働・移住担当)のリプカ委員長は11月5日、これを聞き入れる形で、新最賃は低すぎであり130万ルピアが妥当とし、賃金審議会の決定プロセスを調査する方針をあきらかにした。ジャカルタ特別州に続き他の州の最低賃金も決まりつつある。ジャカルタ特別州を最高として、最低はジョクジャカルタ州の50万ルピア。引き上げ率の最高はバリ州の21.96%、最低はアチェ州の3.66%となっている。

フィリピン
 マニラ首都圏の法定最低賃金が2006年7月11日から1日25ペソ(1ペソ=約2円20銭)へと引き上げられた。フィリピン労働組合会議(TUCP)は5月に基本給部分の75ペソへの引き上げを要求、最終的には上げ幅は3分の1にとどまった。引き上げ幅は昨年と同額。最低賃金は基本給と緊急生活手当(ECOLA)からなり、引き上げられたのは基本給で、ECOLA50ペソは据え置き。非農業従事者の新基本給は300ペソとなり、ECOLAの50ペソの加算で新最低賃金は350ペソとなる。

アルゼンチン
 政府と労組、経営者団体からなる雇用・生産性・最低賃金審議会は7月10日、賛成多数で最低賃金の年内22.5%引き上げを決定した。改定によって、現在の最低賃金月800ペソ(約31000円)は、8月、10月の段階的引き上げを経て、12月から980(55,860円)ペソになる。今年6月に算定された貧困ライン収入(4人世帯)は923ペソ、極貧ラインは429ペソであり、トマダ労相は、最低賃金が貧困ラインの収入水準を初めて超えることになると力説した。なお、アルゼンチンの一人当たりの国民所得は4700ドルで日本の約8分の1。
 トマダ労相は、貧困ラインの収入水準を超える最低賃金の確立が今回の交渉の目的だったと指摘。引き上げは正規労働者40万人以上の給与アップに直接つながり、政府が現在根絶にとりくんでいる未登録の「闇労働」の給与にも影響するだろうと述べた。また、新自由主義が吹き荒れた1990年代をふりかえり、「我々は、長い間洗脳されてきた考え方とは逆に、社会的包摂をともなう(社会的落後者を生まない)経済成長が可能であることを示している」と強調した。
 同国最大の全国労働組合センター、労働総同盟(CGT)は1040ペソの最低賃金を要求していたが、今回の結果について「不十分だが、重要な前進」と評価。アルゼンチン労働者センター(CTA)は、生活の必要性にもとづく新たな貧困ライン収入水準を算定することが約束されていないとして、審議会では棄権した。

ブラジル
 最低賃金の年間調整は、毎年5月1日から実施され、その前月に金額を決定するのが慣行となっている。実質引き上げ率は、2003年1.20%、04年1.21%に対し、2005年は9.30%と大幅に引き上げて月300レアル(17,100円)とした。労働党の最大支持組織である中央労組CUTを中心にして、6大中央労組が、2005年1月から、最賃引上げを要求し、首都ブラジリアへデモ行進を行い、政府から譲歩を引き出した。その後の最低賃金は引き上げられ、06年に350レアルに、07年からは380レアル(21660円)に引き上げられている。最低賃金改定の影響を受けるのは労働者だけでなく、年金受給者なども含まれ4,370万人におよび、所得増加による経済波及効果は大きい(ブラジルでは最賃の引き上げは、年金に連動するシステムとなっている)。労働組合代表と政府は、今後GDP成長率を勘案して最低賃金の引き上げ率を調整していくことで、合意している(07年2月現在1レアル=約57円)

3.最低賃金決定基準についての動向

 ILO第30号勧告では、決定基準について「関係ある労働者が適当な生活水準を維持しうるようにすることが必要」と定めており、第31号条約でも、「労働者とその家族の必要」と「経済的要素」の二つを掲げている。また、第117号「社会政策の基本的な目的及び基準に関する条約」では、第5条2項で「最低生活水準を決定するにあたっては、食料及びその栄養価、住居、被服、医療、並びに教育等労働者の家庭生活に不可欠な要素について考慮しなければならない」としている。第102号「社会保障の最低基準に関する条約」では賃金と社会保障との連動関係を定めており、多くの国が最低賃金と社会保障をリンクさせ、「人間らしい生活水準」の確保に努めている。最低賃金と社会保障とをリンクさせている国のほとんどが、全国一律最低賃金制である。オランダでは、失業手当が最低賃金を基準として算定されるなど、社会保障給付と最低賃金とを結びつけた制度構築をしている。インドネシア政府は、2003年、最低賃金を設定する際には人間らしい生活水準に必要なもの、肉体的要求を充たすものだけでなく、教育や健康、退職後の社会保障などを含め、すべての要素を考慮すべきことを命じた。前記のインドネシアの最低賃金引き上げは、こうした政策の上に決定されたものである。ヨーロッパでは、貧困をなくす観点からの取り組みが進められているが、2005年に開催された欧州最低賃金会議は、当面の最低賃金を一般労働者の平均賃金の50%にすること、さらに60%に引き上げることを決定した。
 世界各国の動きを見ると、格差と貧困問題と経済の安定的発展に処するための最低賃金制の役割が重視され、そのために、全国一律最低賃金制と、人間らしい生活を充たす水準を確保した最低賃金引き上げの取り組みが大きく広がっていることを示している。貧困問題に直面している日本においても、最低賃金制抜本改正の取り組みにも重要な示唆を与えるものとなっている。